障がい者支援施設「リエゾン笠間」(神奈川県横浜市栄区笠間)では、平成28年5月11日、開所10周年を記念して入居者とそのご家族、スタッフ一行の総勢およそ130名!で横浜大桟橋への遠足を実施しました。この遠足のメインイベントは横浜中華街でのランチ。胃ろうの方も皆と同じ円卓を囲んで、同じメニューを食べるんです。遠足の様子をリポートします。さてどんな一日になるか!?
この遠足を実施するにあたって最も苦労したのは、ランチで訪れる中華料理店の予約を取る時、胃ろうの方も同席するのを理解してもらうことでした。
胃ろうから食べるためには、料理をミキサーにかける必要があります。ミキサーを使うためには、電源も必要です。音も気になります。そして何より、彩りよく盛り付けられたお店自慢の料理を、ミキサーにかけて形を崩してしまうこと…。
最初はなかなかお店の理解を得られませんでした。当然ですよね、お店にとっては初めての経験なんですから…。
それでもスタッフの粘り強い説明の結果、お店の理解を得られ、胃ろうの方もそうでない方も一緒に円卓を囲むことが出来る運びとなりました!
昨日まで降っていた大雨もやみ、雲は多めだけれど爽やかな5月の初夏の陽気の下、遠足がスタート!大桟橋、観覧車、中華街。にぎやかな観光地で、入居者のみなさんは満面の笑顔!
観光をしているうちに、あっという間にもうお昼。お腹もすいてきました。さすがに130名全員で1軒のお店に入ることは出来ませんから、何グループかに分かれて予約しておいたお店にGO! 皆で円卓を囲み、各々好きなメニューを注文。当然、ここでもみんな満面の笑顔!
さあ、お楽しみのランチのスタートです。皆で乾杯!
お?Aさんは胃ろうから紹興酒を楽しんでますね。ちょっと様子を伺いましょう。
Aさんは普段、紅茶に洋酒を加えて楽しんでいらっしゃいますが、外食でのお酒はどんな風に楽しむのでしょう?
まずは鼻から、紹興酒の良い香りを楽しみます。香りを楽しんだら、オーダーしたジュース1杯(200ml程度)に、常温の紹興酒を大さじ1杯(15ml)を加えて混ぜ、シリンジ(注射筒)を使って胃ろうから呑みます。お酒の濃さや量は体調によって調整します。また、人によっても様々です。
甘党の方はマンゴープリンや杏仁豆腐を。やわらかいデザートは簡単につぶせるので、胃ろうから食べるのも簡単です。特に崩したりせずにそのままシリンジに入れればOK! ただし、一つ注意点として、ゴマのような固い粒は、量が多くなるとシリンジやカテーテルに詰まってしまう場合があります。その場合は1回の量を少しずつにしたり、粒をよけてから食べるなど、ちょっとした工夫が必要になります。
さあ、お楽しみのランチのスタートです。皆で乾杯!
胃ろうから食べられるのは、液体や、プリンのように柔らかいものだけではありません。Bさんは、ネギチャーシューメンをオーダーしました。さあ、これをどうやって胃ろうから食べましょうか?
スタッフさん達の経験上、麺はミキサーにかければ問題無く食べられることはわかっていました。問題は具材のネギチャーシューです。具材と麺を一緒にミキサーにかけて、うまくペースト状にならないと、一杯まるごと無駄になってしまいます。そのため、具材は具材、麺は麺で別々にミキサーにかけることにしました。使うミキサーは、右写真のようなハンディタイプのスティック型ブレンダーです。
スープを加え、ミキサーにかけます。
すると、心配を他所にネギチャーシューの具材は見事にペースト状になりました。これで無駄になる心配が無くなったので、麺と具材を一緒にして、理想の固さ(コーンポタージュやハチミツ程度の固さ)になるまでスープを加えてミキサーをかけます。
ミキサーにかけて、ペーストに出来れば、胃ろうから食べられないものはありません。具材と面を一緒にしたペーストは、見た目は違っても漂ってくる美味しそうな香りは、ネギチャーシュー麺そのもの!美味しい香りが漂い、栄養剤とは比較にならない満足な食事です。Bさんは一人前をペロリと完食! とっても満足。
そのほかのテーブルでは、チャーハンにスープを加えてペーストにして食べている方もいました。
リエゾン笠間10周年記念遠足は、皆さんのあふれる笑顔でお開きとなりました。 胃ろうからの食事。口から食べるのではなく、胃ろうから食べるというだけで、実は大きな違いはありません。だから、お店で外食することだって、胃ろうでない方と同じ物を食べるのだって、何も特別な事ではないんです。 ただ、お店は初めて経験することが多いので、事前に十分な説明をして理解を得る必要はあるでしょう。
胃ろうだから毎日毎回同じ味の栄養剤を注入する。 そうではなく、皆と同じメニューを皆と同じ食卓でいただく。 これが外食の場でもありふれた光景になったとしたら、とても素敵なことだと思いませんか?胃ろう栄養は「栄養の注入」だけではなく、楽しい「食事」であること。今回の遠足での皆さんの笑顔が、そのことを再確認させてくれました。