写真①は、交換まで約半年間使用した胃ろうカテーテルです。食後(栄養剤等投与後)の管理が不十分だったため、茶色に変色しています。よく見ると、繁殖したカビによってチューブやバンパー部分が変形してしまっています。写真②は変形の影響でバルーンの水を回収できなくなり、交換も困難になったカテーテルです。
変形による不具合だけでなく、カテーテルに汚れが付着したままではカビや雑菌の温床になってしまい、衛生的にも好ましくありません。
下の写真をご覧ください。Aは食後の洗浄をほとんど行わなかったカテーテルです。チューブの中がひどく汚れています。Bは食後にチューブ内を水洗い(フラッシュ)したものです。Cは適温のお湯で洗ったものです。カビは栄養剤に含まれる脂肪分の残りカスによって増殖します。油分を落とすには水よりもお湯がより効果的です。Dは水洗いした後に、10倍に薄めたお酢(食酢)をカテーテル内に満たしたもの。お酢の成分には静菌作用があるため、しつこい汚れが残ってしまう場合におすすめです。
ほとんど洗浄を行っていないカテーテル 汚れがカテーテルにこびりついて黄色く変色している |
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食後に水洗いをしたもの 少し汚れが残って、くすみも見られる |
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食後に適温のお湯で洗浄したもの 少しくすんでいるが、変色は見られない |
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食後に水洗いをした後、10倍に薄めたお酢をカテーテル内に満たしておいたもの ほとんど変色は見られず、カテーテルも透き通っている |
**カード化
酸によって蛋白質が変化して、ヨーグルトのように凝集してしまう現象。例えば、
牛乳にお酢を混ぜるとご存じ“カッテージチーズ”、これがカード化です。(左は乳清を濾す前、濾すとできあがり)
皆さんは炭酸ジュースやお酒は好きでしょうか?飲み過ぎはいけないでしょうが、嗜好品は生活に彩りを添えますね。胃ろうからこれらを入れると問題でしょうか?炭酸やレモンなどはpHが約2.5と食酢とほとんど同じ酸性度です。お酒はpH3.0~4.5と少し弱い酸性度ですが、胃ろうカテーテルの静菌効果に一助あるかもしれませんね。一方南国風生ジュース(パインやキウイなど)にはタンパク分解酵素が豊富に含まれています。栄養剤のタンパクの分解にも作用しますので、詰まりにくくなるかもしれません。なお当HPで用いているGB胃瘻カテーテルはシリコーンでできていて、これらを注入しても変性等心配ありません。
*食酢の静菌効果 |
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抗菌作用には殺菌と静菌があります。静菌とは細菌の増殖を抑制することで、防腐作用のことです。薄めた食酢の効果はこの静菌で、すし飯を思い出すとあーなるほどと思います。食酢は酢酸濃度が約4%で、pHは約2.5と比較的強い酸です(強酸である胃酸はpH1~2)。静菌効果は酢酸濃度0.3%でほとんどの菌に効果あり、0.1%(1Lの水に大さじ2杯の酢)でも代表的な食中毒菌の増殖抑制をします。この濃度ならほとんど臭いも気にならず、胃ろうだけでなく台所、食卓等の抗菌生活に活用できます。 |