くすりを胃ろうから注入する場合、溶かして入れますね。溶かし方の基本は“簡易懸濁法”といって、55℃のお湯で10分、錠剤のまま溶かす方法です。ただ実際には溶けにくいものや、たくさんありすぎてうまく溶けないことがあります。不安なくくすりを注入するためにいくつかの基本を確認しましょう。
くすりを注入する場合、少ないほど溶けやすいですね。不要なくすりを減らすことはあらぬ副作用を減らすことにもつながります。また徐放製剤というのは飲み忘れなどを防ぐために開発されています。ですから胃の中でサッと溶けるものと溶けないものを混合してあります。お湯で溶かすには向いていません。細粒という剤型にも注意が必要です。例えばクラビットという抗菌剤があります。錠剤は溶けるのですが、飲みやすいようにクラビット細粒というものもあり、こちらは溶けません。今はジェネリック製剤が主流で、溶けるはずのくすりでも、メーカーが異なれば溶けない可能性があります。溶けるかどうか必ず確認するようにしましょう。
漢方薬をお湯に溶いたとき、なかなか溶けにくい、または溶け残りがあると気付きませんか?これをむやみに胃ろうから注入してしまうと、あら大変、詰まってしまうことがあります。そこで少し注意があります。
そもそも漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。本来漢方は煎じて服むものでしたが、利便性から乾燥エキス製剤が一般的となりました。このエキスというのは生薬を水で煎じ滓(おり)を取り去り、その液を濃縮したものです。これを賦形剤(ふけいざい:無害無益の混ぜ物のことです)を合わせて顆粒にしています。
例えば「六君子湯」は8つ*の混合生薬の乾燥エキスを、ツムラの製剤には賦形剤(添付文書には添加物と書かれています)として日局ステアリン酸マグネシウム・日局乳糖水和物・ショ糖脂肪酸エステルが用いられ、クラシエの製剤にはヒドロキシプロピルセルロース・乳糖が使われています。これらが溶け残ってしまうのです。
では漢方薬を溶くときにどのようしたらよいでしょうか?わたしがお勧めする方法は、熱い多めのお湯で溶かしますがどうしても溶け残ったものが沈んでいる場合、これを除けて上澄みの液体を冷めた頃合いを見て注入しましょう。溶け残ったもののほとんどが添加物として使われた賦形剤ですから、生薬エキスはきちんとからだに届いていると思います。